「魔法の国の建築家」を読んで

ホルスト・ヤンセンと同じように、カール・コーラップもウィーンで初めて知った画家です。種村季弘著「断片からの世界」にコーラップに関する評論が掲載されていたので、これを契機にコーラップの絵を知った時の昔の思い出を昨日のブログに書いてみました。著作ではコーラップは「ほとんど解剖学的なサデイズムにしたがって切開された廃物オブジェが散在していながら、透明で静謐な神秘的一体感が眼に見えない雪のように沈々と降り込めている」世界を描いていると書かれています。その後、批評家の見解がふたつに分かれてるとの指摘があります。「一人がむしろ自足した田園詩人のひそやかなオプテイミズムを見ているところに、もう一人は工業化社会におけるペシミストの顔を見ている」。相反するコーラップの世界。いづれの画家も表現豊かな世界があれば別の解釈が成り立つものと思います。コーラップも現代美術界では優れた画家の一人だと私も思います。

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