週末 造形とコトバを考える

日曜日になって朝から工房に行きました。今日はいつも来ている美大受験生の他に文学系の高校生がやってきました。文学系の子は詩を書いたり、小説を書いてコンクールに応募しています。彼女も美大受験生同様、工房の方が筆が進むらしく時折、工房に顔を出しています。私は昨日準備した大きめなタタラを使って陶彫成形をやっていました。今日は寒い一日でストーブが欠かせませんでした。陶土は水を含むので寒い時は手が悴んできます。成形が少し進むとストーブで手を温めました。陶彫成形が一つ終わると、以前作っておいた作品に彫り込み加飾を施します。今日も午後は彫り込み加飾に精を出しました。今日も定番の制作に明け暮れた一日でしたが、文学系の子がいてくれたおかげで、私は造形とコトバを考える機会を持ちました。私が現代詩に興味関心を寄せたのは高校1年生の頃でした。国語の教科書に掲載されていた現代詩に心が惹きつけられ、書店に行って何冊か詩集を買ってきました。最初は難解な詩は理解できず、比較的平易なコトバを辿っていました。当時流行っていた和製フォークソングにそうした現代詩が歌詞の中に使われていたのが、私にとって画期的な出来事でした。歌詞とは違うニュアンスの現代詩を訥々と歌い上げ、決してメロディアスとは言えない歌の数々に私は忽ち魅了されました。それは通常の歌詞のようにメロディとともに流れてしまうものではなく、立ち止まってコトバを吟味していく手法に、私はコトバのもつ力を見取っていました。コトバは造形と同じトレーニングが必要と感じたのはずっと後になってからで、自分も曲りなりにコトバを紡いでみましたが、上手くいかずにやめてしまいました。目の前で高校生がコトバを紡いでいるのを見ると、こうした表現に立ち向かう意志とトレーニングがあれば、私はもう少しマシになっていたかもしれません。コトバに比べれば造形表現は、10代の頃から私をトレーニングに誘い、今まで欠かすことなく私を追い詰めてきました。それでも不自由さを感じている私は、長く生きなければ造形表現の極意は掴めないと思っています。コトバは圧倒的に時間が足りないのは承知していますが、それでも魅了される世界がそこにあるならば挑戦していこうと思っています。

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