「黄金町マリア」読後感

「黄金町マリア」(八木澤高明著 亜紀書房)を読み終えました。書籍の半分以上が写真なので、もっと早く読み終えることが出来たのですが、遅読して黄金町の路上に立っていた外国人娼婦たちの実態をじっくり考える機会にしました。どうして黄金町が性風俗の街になったのか、文章の中から引用してみたいと思います。「幕府が思いついたのが、東海道からは山で隔てられ、外国人を閉じ込めておくには都合がよく、三方向を山に囲まれた入り江である橫浜を開港することだった。幕府は当時百戸あまりしかない半農半漁の小さな漁村にすぎなかった橫浜を開港した。1859年の橫浜開港とともに、橫浜に上陸する外国人船員や兵士の相手をさせるため、近くの神奈川宿や品川はもとより、遠く小田原からも飯盛り女と呼ばれた宿場の娼婦たちが集められた。~略~皮肉にも、焼け野原となった橫浜に再び性風俗の隆盛をもたらしたのは、江戸時代のペリーに続き、終戦後橫浜に進駐した米軍であった。~略~米軍によって、橫浜の中心地・伊勢佐木町は接収され、日本人は商売をすることができなかった。そのため、伊勢佐木町に添うように流れる野毛から黄金町にかけての大岡川沿いには、米軍基地から流れてくる物資などを売る闇市が立った。多くの屋台が並び、夜になると、屋台で働く女たちが体を売った。色街としての黄金町が形成されていくことになる。」という箇所で黄金町の色街導入と形成が語られています。その後、警察の摘発を受けて、外国人娼婦は出身国に帰されることになりますが、筆者はタイやコロンビアに飛んで、娼婦の足取りを追っていきます。日本で稼いだ金銭で裕福に暮らしている者がいる一方で、親の賭け事やトラブルに巻き込まれて本国でも労働を強いられる者もいました。ただし、本国では食うや食わずの生活ではなく、生活水準を上げるために来日して体を売っている状況も見えてきました。日本との関係は決して綺麗事で済むはずもなく、借金を負わされたり、騙されたりしながら、それでも本国で待つ家族のために逞しく生きた娼婦たちの様子が垣間見られました。そんな事情を満載した本書は貴重な一冊だと思いました。

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