ハイデガーとフロイト

「風景の無意識 C・Dフリードリッヒ論」(小林敏明著 作品社)を読み始めて随分時間が経っていますが、ようやく終盤に差し掛かりました。本書はドイツのロマンティク絵画を代表するC・Dフリードリッヒに関する評論ですが、ドイツ思想史からその背景を探ろうとするもので、ドイツが生んだ稀有の哲学者ハイデガーの「存在と時間」から抽出された分析から、本書は始まっています。そこに突如フロイトが登場してきます。フロイトは精神医学の権威で、思想史に名を残す人物です。この20世紀を代表する2人の思想家にあっては、互いに言及しあうような文献は存在しません。政治的に見れば、ハイデガーはナチスの党員で、フロイトはユダヤ人としてナチスの迫害を受けて亡命を余儀なくされました。その2人の溝は埋め難く、ましてや思想的な類似性を論じることなどあり得ないと思っていました。本書は序章と終章でハイデガーとフロイトの共通項を探っています。本書を書店で見つけた時に、頁を捲るとハイデガーとフロイトの並列された目次が出てきて、些か驚きました。これは読んでみたいと思って購入したわけです。私は昨年の夏からハイデガーの「存在と時間」読破に挑みました。その都度NOTE(ブログ)に内容をアップしているので、アーカイブを見ると読書の痕跡がわかります。フロイトは大学生の頃に心理学で「夢判断」の概要に触れただけで、今までまともな論文を読んでいません。本書が契機になって、今年の夏からフロイトに挑もうと思っているところです。本書を心底楽しむには2人の思想家の代表著作を読まないことには、著者が意図するところが伝わりにくいと思っています。ともかく本書を読み終えてから、改めてフロイトに触れ、本書で分析された内容を再考したいと考えています。

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