師匠の絵による「人生の選択」

昨日、長野県の山里に住む師匠の池田宗弘先生から一冊の絵本が送られてきました。「人生の選択 デーケン少年のナチへの抵抗」というタイトルがつけられた絵本で、これは明らかに子供向けではなく、大人を対象とする絵本でした。ナチスドイツが台頭した時代を生きた神父アルフォンス・デーケンの実話を基に、本書は堀妙子・文、池田宗弘・画で作られ、藤原書店から発行されたものでした。デーケン氏は1932年ドイツ生まれで、上智大学で死生学を教えていた経歴を持っています。「わたしのライフワークは人びとに、生きるとは何か、死とは何かを伝えることでした。死を考える出発点になったのは、4歳の妹パウラの死でした。さらに、戦争の時、焼夷弾で亡くなった友人一家の不条理な死、同時期に、わたし自身も連合軍の飛行機から機銃掃射で狙われ、間一髪で命拾いをした経験もあります。常に死は、身近にありました。わたしは、肉体の死より恐ろしいと思った体験があります。それはナチのエリート養成学校に行くことを断った時です。この学校に入ることは精神的な死を意味していました。真理は、熱狂する民衆の中にはありません。もし、入学していたら、わたしの命はなかったでしょう。戦後、ナチのエリートたちは皆、殺されましたから。その後、わたしは自分が司祭への道を歩みたいと決心した時、日本26聖人殉教者、ルドビコ茨木の影響を受けました。本格的に司祭の道を志した時に、聖フランシスコ・ザビエルの書簡を読み、宣教師になって日本に派遣されるようにと願いました。わたしはザビエルと同じイエズス会に入会しました。」これは絵本の最後に書かれていたデーケン氏の言葉です。絵本は天使ガブリエルが、神から啓示を受け、猫に変身して少年デーケンのもとに使わされるところから始まります。池田先生にしてみれば、彫刻のモチーフのひとつである猫とキリスト教が本書の主題であり、最も得意とする分野だったはずで、楽しんで描いていた様子が伝わってきました。丹念に丁寧に描かれた絵画の背景ひとつ一つに思いが込められていました。

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