橫浜の「ホイッスラー展」

先日、横浜美術館で開催されている「ホイッスラー展」を見てきました。ホイッスラーはてっきり英国生まれの画家と自分は思っていましたが、米国生まれだったことを知りました。ホイッスラーが生きた時代は、印象派以前のクールベ等が活躍したリアリスムの時代から印象派画家たちが日本の文化芸術に関心を示した時代に亘り、ホイッスラーもジャポニズムに魅了された一人になりました。当時、ホイッスラーの唱えた「芸術のための芸術」とは、ホイッスラー自身の言葉を借りれば「絵画作品は独自の価値をもつべきであり、芝居や伝説、あるいは特定の地方と結びつく関心に依拠するべきではない。」という原理のことで、神話や伝説に題材を求めた絵画から写実表現へ向かわんとして、「芸術は全ての不純物から独立しなければならない。」と唱えるに至ったようです。ホイッスラーの題名にも音楽用語であるハーモニーやノクターンが純粋な美的価値観を表すものとして再三登場しています。ホイッスラーは、当時の絵画に主題ではなく真の美を求めた革新の画家だったと言えます。その後の時代に続くホイッスラーの絵画の中で、自分は「16点のテムズ川の風景エッチング集」が気に入りました。線描のタッチの抑揚が何とも心地よくて、色彩がないにも関わらず色彩豊かな情景が表れていると感じました。こんなふうに描いてみたいと意欲を掻き立てられるものがありました。ジャポニズムについては後日にしようと思いますが、潤いで満たされた画家の静かな絵画世界に触れて、快い気持ちになれたのは事実です。

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