平塚の「川瀬巴水展」

先日閉幕した展覧会を取り上げるのは、自分の本意ではありませんが、展覧会の詳しい感想を述べたくてアップすることにしました。画家川瀬巴水のまとまった仕事を見たのは、私にとって初めてではないかと思います。川瀬巴水は1883年(明治16年)から1957年(昭和32年)まで活躍した大正・昭和期の浮世絵師、版画家です。ネットによると「川瀬巴水は、衰退した日本の浮世絵版画を復興すべく吉田博らとともに新しい浮世絵版画である新版画を確立した人物として知られる。近代風景版画の第一人者であり、日本各地を旅行し旅先で写生した絵を原画とした版画作品を数多く発表、日本的な美しい風景を叙情豊かに表現し『旅情詩人』『旅の版画家』『昭和の広重』などと呼ばれる。アメリカの鑑定家ロバート・ミューラーの紹介によって欧米で広く知られ、国内よりもむしろ海外での評価が高く、浮世絵師の葛飾北斎・歌川広重等と並び称される程の人気がある。」とありました。浮世絵の版画技法を最近まで持続し、美しい風景を数多く描いた画家として私も川瀬巴水を記憶していましたが、私はどちらかというと雑誌に掲載された挿絵としての世界をよく知っていて、オリジナルの版画を見たことはありませんでした。今回の展覧会で数多くの風景版画を拝見し、その全体構成や表現の豊かさを知りました。その整いすぎた画面に巧みな技法を見取りましたが、私個人としては印象に強く残ることはありませんでした。確かに情緒豊かな風景描写は海外で人気があったのは頷けました。展覧会の閉幕前だったせいか、訪れる鑑賞者が大変多く、また理解し易い画風なために熱心に画面に見入っている人もいました。同じ美術館で開催されていた彫刻家柳原義達の精神性に圧倒されていたためか、川瀬巴水の完成度の高さに今ひとつピンとこないものを感じてしまいました。それでも日本が世界に誇る浮世絵技法を余すところなく伝承してきた川瀬巴水の世界は、多くの人に感動を与えるものであったと思っています。

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