形態のピカソと色彩のマチス

現在読んでいる「マチスの肖像」(ハイデン・ヘラー著 天野知香訳 青土社)の中でピカソとマチスのライバル関係が浮き彫りになっています。自分の鑑賞遍歴から言えば、ピカソは自分にとって解りやすい巨匠で、青の時代からキュビスムを経て晩年に至る作品の数々に、自分は高校時代から刺激を受けてきました。自分がアカデミックなデッサンを学んでいる頃は、「青の時代」の痩せこけた人物に惹かれ、自分が抽象衝動に駆られた頃は、その後のピカソの作品に惹かれました。まさに形態を追求したピカソは自分の興味関心を寄せるに充分な巨匠だったと言えます。マチスは色彩によって世界を創りあげようとした巨匠で、ピカソに比べて平穏な画面構成が多く、若い頃の自分には理解できませんでした。マチス晩年の色面による平面的な作風に感動を覚えたのは、ずっと後のことで、マチスの作品が南国の太陽のように輝きだし、その斬新な構成に心が囚われてしまったのでした。とくにマチスのアラベスクから自分のレリーフ模様は生れたと言っても過言ではありません。形態のピカソと色彩のマチス。いずれ劣らぬ20世紀の巨匠で、今でも親しみつつ刺激をもらっています。

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