「マチスの肖像」の読後感
2013年 2月 13日 水曜日
「マチスの肖像」(ハイデン・ヘラー著 天野知香訳 青土社)を読み終えました。マチスは画集「ジャズ」やヴァンス礼拝堂という晩年の作品が自分にとって印象的な画家ですが、生い立ちから修行時代、不遇な時代を経て、ロシアやアメリカのコレクターに認められ、ピカソとともに20世紀を代表する巨匠に上り詰めるまでを本書は分かりやすく綴っています。マチスは色彩によって絵画の価値観を変え、構成も抽象化・平面化していきました。これは後に続く芸術家たちの非対象作品への道を切り開いたものであったように思います。マチスが愛したアラベスクは、自分も影響され、洋の東西を問わず世界各地の文様の素晴らしさに目を瞠るようになりました。マチスの洗練された線描も、自分が美しいと感じるデッサンのひとつとなっています。次にマチス自ら著した「画家のノート」がどこかの書店で見つかれば、これも読んでみたいと思っています。本書の最後に掲載されていたマチスの言葉で締めくくります。「私は忍耐強く木のマッスが、それから木そのものが、幹、枝、葉…がどのようにできているかをつかみ取らなければならない。木と一体化した後、私は木に似た対象を創造しなければならない。つまり木の記号を。」
関連する投稿
- 「中空の彫刻」読後感 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
- 「グロテスク」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入り、今回は「4 […]
- 「状況-ファン・ゴッホとの関わり」について フランス人の芸術家ゴーギャンの生涯の中で、劇的とも言える一幕があり、そのドラマティックな事件がゴーギャンを美術史とは関係なく、世界的に有名にしたと言ってもよいと思っています。それはオランダ人の画家フ […]
- 「絵画、彫刻の自律性の追究」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の第一部「19世紀における『画家=彫刻家』と『芸術家=職人』の登場」の第1章「画家と彫刻家」の「3 […]
- 「状況-マルティニーク島滞在」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中で、今日から「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入ります。今回は「1 […]
Tags: 書籍, 画家, 芸術家
The entry '「マチスの肖像」の読後感' was posted
on 2月 13th, 2013
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.