工業デザインに求められるもの

現在読んでいる書籍によって自分の思考が様々な方向へ触手を伸ばし、また思考の偏りに対し自然感覚的に自らバランスをとることがあると思っています。「生きのびるためのデザイン」(ヴィクター・パパネック著 阿部公正訳 晶文社刊)は単なるデザインや美術を論じたものではなく、人間の営みそのものが将来どのようになっていくかを見据えた大きな体系的な研究であることは疑う余地もありません。工業デザインを切り口にして、私たちの生活に及ぼすありとあらゆるモノが、時としてマイナス要素をもっていることも具体的に書き記しています。文明の利器のよって生じた利便性とそこに潜む公害。流行に敏感な大衆の心を掴む一過性のデザインが齎した廃棄を繰り返す現状。考えるに工業デザイナーはテクノロジーと結びつき、人間工学の面からもより専門的な知識が求められる職種です。自分が工業デザイナーの道を断念したのも、デザインのもつ社会的責任に正面から向き合えば、自分に無理を強いる結果になりかねないと判断したためでした。自然感覚的なバランスとして、自分の思考は制約の無い自由な世界に向かい、非日常的な造形に辿り着いたのです。当然の成り行きで自分の将来に対する経済的な保障はなくなりましたが…。もう工業デザイナーに未練はありませんが、大衆をターゲットにするデザインなればこそ、その一消費者である自分は、買う立場から商品はしっかりしたものを選びたいと思っています。

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