「文化的総合」について

「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「2 文化的総合」をまとめます。ここではゴーギャンの第二次タヒチ滞在中の作品で、浮彫りによる木彫作品「戦争と平和」に関する内容が詳しく書かれていました。初めて注文として請け負って制作された作品である「戦争と平和」は、葡萄農園主であったギュスタヴ・ファイエの所有となり、彼のコレクションの中で主賓客の位置を与えられたようです。「注文によって制作されたゴーギャンの唯一の作品である《戦争と平和》はまた、ところどころ金の賦彩のある豊かな色彩によっても、タヒチ時代の作品を通じて例外的である。全体的に茶色の色調でまとめられ、木々の葉には深い緑が、木に付いた実や幾人かの人物の髪の毛などには赤が用いられ、ブルターニュでシャマイヤールとともに用いていた色調を彷彿とさせる。」人物のポーズも洋の東西を問わず、たとえばローマ芸術の傑作の最良の部分を利用しています。またプリミティヴな容貌の背景に繁茂する豊かな自然を表すことによってオセアニアの性格を与えているようです。「東洋や西洋の古来の美術に依拠し、素朴な力強い彫りでいにしえの神秘の世界を喚起したゴーギャンの木彫は、こうしてファイエの手によって、西洋の伝統的芸術品の流れの上に、正当な位置を与えられたのであった。~略~第二次タヒチ滞在中の装飾彫刻は、西洋古典古代の浮彫彫刻、西洋近代絵画や彫刻、東洋の仏教彫刻などさまざまな文化的源泉を、時には一つの作品の中に混在させながら総合し、オセアニアのプリミティヴな野蛮さの中にまとめ上げたものであった。」

関連する投稿

  • 「発掘~地殻~」イメージの源泉 新作のイメージは制作の途中で突如湧くことが多く、今回は何かが天上から降りてくるような錯覚を持ちました。「発掘~地殻~」は既に2012年5月から制作が始まっていますが、題名は先日思いついたばかりです。 […]
  • 囲むカタチ 何本もの柱に文様を彫り、その柱を円形に立てて囲むカタチを作りたいと考えています。現在進行している彫刻ですが、前にブログで書いたとおり今は構成要素となる部分(柱)を作っている最中で、これを組み合わせる […]
  • 「状況-木彫」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第5章 タヒチ滞在(1891~1893年)とパリ帰還(1893~1895年)」の「1 […]
  • 「木彫浮彫」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第4章 陶製彫刻と木彫浮彫(1889年と1890年)」の「6 […]
  • 「炻器と木彫」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]

Comments are closed.