6月RECORDは「流転の因」

雨が降れば河川が氾濫し、豪雨ともなれば逆巻く波に家屋が呑み込まれていく場面を何度となく最近の報道で見ています。梅雨の季節になれば水害による悲惨な状況をつい考えてしまうのは私だけではないはずです。梅雨に入るのはいつ頃でしょうか。今は真夏のような暑い毎日が続いていて、工房に篭っていると熱中症が心配になります。最近はどうも気候がおかしくなっているようで、雨が降ればゲリラ豪雨になる可能性も否めません。今月のRECORDはそんな気候の変化を取り上げて作品化しようと思っています。RECORDは写実性を控えて、象徴として簡素化して作品にまとめてみようと考えていて、豪雨が齎す河川の氾濫も単純な線と面に集約していくつもりです。第二次大戦で爆撃を受けたスペインの街ゲルニカを描いたピカソの大作を見て、象徴的なカタチが、鑑賞する人間に与える衝撃によって、より鮮明で胸が抉り取られるような気分になることがありました。豪雨による被害状況も、人災と自然災害の違いはあれど、ゲルニカに匹敵するインパクトを私は感じています。6月のRECORDのテーマを「流転の因」としたのはそうした災害のことを何かしら表現したいと思ったからです。RECORDは一日1点ずつ小さな平面作品を作り上げていくもので、一日の気候変動を描くのには相応しい媒体ですが、何年も前から5日間で展開する方法を考えていて、その時その状況を描くことに距離をおいてしまい、その都度時事問題を描くことにはなりません。それでも大きく捉えれば、気分としてその時の状況に沿っているとも思っています。私はデザイン性が優先する癖があり、バランスよく綺麗にまとめてしまうので、テーマの内容をよく吟味しながら、制作を進めていきたいと思っています。

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