竹橋の「パウル・クレー展」

パウル・クレーという画家名が新聞の展覧会欄に載っていると、必ず展覧会に行きたくなるという癖が自分についてしまいました。何度クレーの絵画に触れたことか、滞欧生活の頃から考えると数え切れません。クレーは多作だったので、そのつど違う絵画にお目にかかって、ペンの走り書きひとつに哲学的なデッサンを感じてしまいます。東京竹橋にある国立近代美術館で開催されている「パウル・クレー 終わらないアトリエ」展は、クレーの制作プロセスを主に構成された展覧会で、制作行為や技法ごとに分けられていました。さまざまな試みをしている様子を展示して、アトリエの中でさも実験しているかのような演出がありました。自分もRECORDをやっている制作者として、クレーの試みが身近に感じられ、試行の意欲に勇気付けられました。試行は思考であり、試作は思索と読みかえてもいいように思えます。クレーがどんな人物だったのかわかりませんが、絵画から読み取れば律儀で神経質で皮肉屋だったのかもしれません。そんな一面を感じる一方、音楽的で豊かな響きも感じます。実際にクレーはバイオリンを演奏していました。バウハウスに招かれて学生のために造形理論を唱えています。今回の展覧会を見て、クレーは絵画制作だけでなく理論を含め多面的に人物を捉え、生活や生き方そのものが全てクレー・ワールドで、その中で造形物を生み出しているように思えました。

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