二足の草鞋生活最後の日

3月最後の日曜日になりました。来月から週末のたびに創作活動をしなくて済むため、今日が二足の草鞋生活最後の日となりました。私は20歳の時に彫刻の魔力に取り憑かれて以来、生活費を稼ぐのは別の手段をとり、週末だけ彫刻を作る生活を続けてきました。別の手段と言ってもその日暮らしのアルバイトではなく、横浜市に正規に採用されて公務員となりました。ちょうど私が30歳になった時で、社会人としては遅い出発でした。12年前に管理職になり、今月末の定年までこの職種を続けてきました。二足の草鞋生活とは、公務員と彫刻家の二つの世界を持った自分に対して名づけたもので、30年以上も週末を利用した創作活動が習慣となっていました。日曜画家という言葉がありますが、私の場合は差し詰め週末彫刻家と言うべきでしょうか、それは趣味という範疇を超えていて、もし敵うなら彫刻家として独り立ちしたい思いが込められています。自分の工房を持つ前から、東京銀座のギャラリーせいほうで個展を企画していただき、個展は既に15回を記録しています。公務員のほうは責任を伴う管理職に抜擢されてからは、彫刻では食べられないからこれをやっているという意識ではなくなりました。自分の職場や職員を守るという強い意志に支えられるようになり、仕事に没頭している時は創作活動を忘れていました。公務員としてもインパクトのある日常を送っていたという自覚があります。週末になると気持ちがホッとして工房に行きましたが、それも束の間で彫刻の素材に触れていると、ウィークディの仕事は完全に忘れ、創作活動に没頭していました。二足の草鞋双方が厳しい状況でも、その環境に自分が置かれれば、何とかやっていけるものだなぁと実感しています。今日はいつものように工房に出かけ、混合陶土を作るために土錬機を回し、菊練りを行い、小分けにして成形のための保存をしました。午後は職場に用事があって出かけましたが、名残惜しい中で暫し職場の雰囲気を味わいました。そうしたことに比べ、工房は何も変わらず、いつもの空気が流れていました。この空気感が私を元気にさせるのだと改めて思いました。二足の草鞋生活最後の日と言えども、工房でやっていることは変わらず、今後もこれを続けていくと私は決めています。

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