大地から突き出た造形

陶彫部品を組み合わせて集合彫刻にしていく私の作品は、30代の半ばから始まりました。20代のうちは単体で彫刻を作っていました。習作期はほとんど人体塑造ばかりで、それによって立体構造の捉えを学んでいたのでした。それは粘土でカタチを作り、石膏取りをして保存する方法が一般的でした。そのうち陶土を焼成することで保存ができ、さらに焼成した陶彫が自分のイメージした世界を表現できるという発見が、私をして陶彫に駆り立てた要因です。当時のイメージは20代後半に旅したエーゲ海沿岸に広がるギリシャ・ローマの遺跡を見たことで、発掘された建造物に触発されたものです。大地に広がるパノラマのような造形にするには、単体で彫刻していたのでは無理があり、そこで陶彫部品を組み合わせて集合彫刻にしていく方法を思いついたのでした。発掘された建造物は荒涼とした大地にあったり、山肌を切り崩して存在していて、その見事な景観は乾いた風と共に私に強く印象づけました。その頃の写真を見ると、私も家内も真っ黒に日焼けしていて、やせ細っていました。私たちはウィーンからバスを乗り繋いでトルコやギリシャに辿り着いたのでした。遺跡を見ると土木技術の素晴らしさや、崩壊した街の構造そのものに古代文化の高さが窺い知れるのですが、私はその遺跡群が大地から突き出た造形のように思えて、大地を座標にして上と下に広がっている世界を思い描くことになりました。自然界では気候変動により土地が隆起することがありますが、古代都市もそんなふうに思えたのでした。これから作っていく最新作は、まさにイメージの原点に返って大地から突き出た造形をやろうとしています。

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