小品を1点廃棄することに…

今年作っている陶彫の小品「陶紋」は5点ありましたが、窯出しをしたところ5点のうち1点に罅割れがあり、修整不可能と判断して廃棄することにしました。廃棄を決めた1点は、彫り込み加飾を一番細密にやっていたので残念に思いました。私の彫刻作品は石や木ではなく、主な素材を陶土にしています。陶土による造形は焼成が制作工程にあるため、最終段階で全てが水泡に帰することがあり、こればかりは仕方がないことです。まさに陶彫の宿命とも言うべきもので、自己表現の優劣に関係なく作品は淘汰されていってしまいます。原因をいろいろ考えたこともありましたが、はっきり分からないことも多く、今でも宿命を受け入れていくとしか言いようがありません。ともあれ今年の「陶紋」は4点になりました。前にも廃棄した陶彫は数多くあって、工房の裏にハンマーで叩いて割った作品の欠片が積んであります。この窯は一度深夜の停電で電気が切れたはずでしたが、他の陶彫作品には影響はありませんでした。それだけでも救われた気持ちです。嘗て大きな陶彫部品が割れたときは落ち込むこともありました。30代初めの陶彫を始めた頃は、割れることは日常茶飯で、それでも精一杯手間をかけて作っていました。失敗作品を捨てるに捨てられない思いに駆られたこともありました。窯出しの日に布団をかぶって一晩悩み、翌日に失敗作品をハンマーで割る作業をしたこともありました。最近はあまり割れることがなかったので、小品を1点廃棄することは珍しいことです。今でも多少の落ち込みはあります。こればかりは慣れるものではありません。気を改めて今晩も窯入れをしています。最終制作工程で自分の手の届かないところに作品を置くのは、1点廃棄があった後ではなかなか辛いものです。炎神の悪戯とも思えるし、逆に得体の知れないものに畏怖を持つこともあります。それでも陶彫は面白いと感じていて、この素材に長年関わっているのです。

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