小品を1点廃棄することに…
2020年 5月 21日 木曜日
今年作っている陶彫の小品「陶紋」は5点ありましたが、窯出しをしたところ5点のうち1点に罅割れがあり、修整不可能と判断して廃棄することにしました。廃棄を決めた1点は、彫り込み加飾を一番細密にやっていたので残念に思いました。私の彫刻作品は石や木ではなく、主な素材を陶土にしています。陶土による造形は焼成が制作工程にあるため、最終段階で全てが水泡に帰することがあり、こればかりは仕方がないことです。まさに陶彫の宿命とも言うべきもので、自己表現の優劣に関係なく作品は淘汰されていってしまいます。原因をいろいろ考えたこともありましたが、はっきり分からないことも多く、今でも宿命を受け入れていくとしか言いようがありません。ともあれ今年の「陶紋」は4点になりました。前にも廃棄した陶彫は数多くあって、工房の裏にハンマーで叩いて割った作品の欠片が積んであります。この窯は一度深夜の停電で電気が切れたはずでしたが、他の陶彫作品には影響はありませんでした。それだけでも救われた気持ちです。嘗て大きな陶彫部品が割れたときは落ち込むこともありました。30代初めの陶彫を始めた頃は、割れることは日常茶飯で、それでも精一杯手間をかけて作っていました。失敗作品を捨てるに捨てられない思いに駆られたこともありました。窯出しの日に布団をかぶって一晩悩み、翌日に失敗作品をハンマーで割る作業をしたこともありました。最近はあまり割れることがなかったので、小品を1点廃棄することは珍しいことです。今でも多少の落ち込みはあります。こればかりは慣れるものではありません。気を改めて今晩も窯入れをしています。最終制作工程で自分の手の届かないところに作品を置くのは、1点廃棄があった後ではなかなか辛いものです。炎神の悪戯とも思えるし、逆に得体の知れないものに畏怖を持つこともあります。それでも陶彫は面白いと感じていて、この素材に長年関わっているのです。
関連する投稿
- 週末 12点目の陶彫成形 今日は昨日に続き、陶彫制作に没頭した一日でした。座布団大のタタラはやや柔らかめで、立ち上げる時に裏から陶土を紐状にして貼り付けています。これは補強のためにやっていることで、タタラと紐作りの双方で高さ […]
- 週末 焦らず休まず陶彫制作 日曜日はほぼ一日陶彫制作をやっています。土曜日はウィークディの疲労が残っているため、美術館や映画館に出かけることが多いのですが、制作工程を考えると、日曜日は朝9時から夕方4時くらいまで工房に篭ってい […]
- 三連休 根の陶彫部品を作り始める 三連休の中日です。今日は文化の日で明日が振替休日になります。今日は朝から工房に篭りました。新作の陶彫作品は次の段階に入りました。新作は屏風と屏風前の床の部分に陶彫部品を連結して設置する集合彫刻になり […]
- 休庁期間 制作&賀状宛名印刷 今日から休庁期間になり、朝から工房に篭りました。年末の雑用は家内任せにしているので、自分は極楽トンボのような暮らしです。申し訳ないと思いつつ、工房では陶土と格闘していました。「発掘~宙景B~」の高い […]
- 窯のトラブル 窯の出し入れを頻繁に行っている時に、ブレーカートラブルに見舞われることが毎年あります。昨年もありました。私の陶彫は釉薬を使わないので、窯の温度が上がりきらないうちにブレーカーが落ちても、幸い作品に大 […]
Tags: 作品, 制作, 陶土, 陶彫
The entry '小品を1点廃棄することに…' was posted
on 5月 21st, 2020
and last modified on 5月 21st, 2020 and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.