映画「ゴッホとヘレーネの森」雑感

先日、横浜市中区にあるミニシアターに映画「ゴッホとヘレーネの森」を観に行ってきました。後期印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホは波乱に満ちた生涯を送ったため、特集番組や映画化されることが多く、私にとっては大変馴染みのある芸術家です。この映画はファン・ゴッホの収集家だった女性資産家が残した作品を基に、ファン・ゴッホの絵画世界を読み解いたドキュメンタリーで、私には刺激的な台詞が散りばめられた内容でした。「1890年に自ら命を絶ったファン・ゴッホ。生前は作品が評価される機会も少なく、死後は遺族がほとんどの作品を所有していたため、無名の存在に近かった。そんなファン・ゴッホの作品と出会い、個人収集家としては最大規模の300点(うち油彩は85点)を収集したのは、ある一人の女性だった。」と図録にありましたが、ヘレーネ・クレラ=ミュラーは夫と共に、その後広大な敷地にクレラー=ミュラー美術館を設立しました。また収集品をオランダ国家に寄贈したため、美術館は国立になっています。ファン・ゴッホとヘレーネは直接会ってはいませんが、ファン・ゴッホの多くの作品が守られたのは彼女がいたおかけだったと言えます。収集品の中にはデッサンが沢山含まれますが、私は高校生の頃から、木炭や鉛筆で農民を描いたファン・ゴッホのデッサンが大好きで、自分の受験勉強の励みにしていました。その後の鬼気迫る油彩にも若い頃は憧れました。常軌を逸した精神状態が、うねるような筆致と歪んだカタチに表れていて、20代の私を表現主義へと誘ったのでした。心が病まないと人の気持ちを抉るような世界を表現できないと私は今でも信じているせいか、スケールこそ違えど工房に立て籠っている私を家内が時折心配しているのです。でも、私は天才じゃないし、フロー状態になっても水泳で気晴らしをしているので、常識的な範疇にいることは確かです。映画「ゴッホとヘレーネの森」は私にいろいろな示唆を与えてくれました。面白いドキュメンタリー映画だったと思っています。

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