上野の「プラド美術館展」
2018年 5月 10日 木曜日
ゴールデンウィーク中の東京上野の賑わいは大変なもので、家内と私はそんな混雑を避けて、夕方の時間帯に東京国立西洋美術館に行ってきました。開催していたのは「プラド美術館展」。副題に「ベラスケスと絵画の栄光」とあり、今回来日したプラド美術館所蔵作品の目玉は、セビリア出身の巨匠ベラスケスの絵画7点でした。もちろんベラスケスだけではなく、ティツィアーノやルーベンスも含まれていて、スペイン並びにヨーロッパ全土の最高峰の芸術作品に触れることが出来ました。20代の頃、私はスペインの首都マドリードを訪れ、プラド美術館に足を運びました。質量とも圧倒的な芸術品の数々に、見て回った多くの作品を咀嚼できず、安宿で呆然とした記憶があります。寧ろ日本の企画展の方が、作品をじっくり味わえるのではないかと思ったほどです。ベラスケスの絵画群は、改めて写実主義の中にあるリアリティを私に感じさせてくれました。図録にこんな一文がありました。「ベラスケス芸術を純粋にスペイン絵画史の文脈において眺めると、その作品の図像学的な特異性にすぐ気づく。同時代のスペインでは、画家の多くが基本的に宗教画を手がけ、一部が静物画を専門としていた。それに対してベラスケスは、後半生の25年、信仰のための絵画を一度も描かず、宮廷肖像画に特化した。そして、ほかのスペイン人画家よりも頻繁に、非常に独創的な神話画や風俗画、風景画を制作した。肖像画についてさえ、矮人や道化の肖像のような割合に珍しい分野を決然と掘り下げたのである。~略~ベラスケスはほかのヨーロッパの宮廷と異なる基準に従って宮廷肖像画を制作したり、身近にあったティツィアーノやルーベンスの作品よりもはるかに色彩への傾倒を推し進めたり、絶えず古典主義に挑戦して独特な主題表現の方法を試したりした。」(ハビエル・ポルトゥス著 豊田唯訳)ベラスケスの個々の作品については別稿を起こします。