「幼児の性的な体制」について

「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)第四章「幼児の性的な成長と性格の形成」のうち前半部分である「幼児の性的な体制」のまとめを行います。「夢解釈」の解説書として読み始めた本書でしたが、フロイトが提唱した理論全体を考える良い機会を得ました。「幼児の性的な体制」の冒頭部分を引用します。「当時の西洋では、子供は天使のように無垢な存在だと考えられることが多かった。そして子供に性的な欲望が存在するなどとは考えてもみなかったのである。しかしフロイトは、人間は誰もが幼児のときに、さまざまな性的な欲望を抱き、それを充足しようとするものだと考えた。そしてこれは否定的に考えるべきことではなく、むしろ人間の成長を促し、やがて他者を愛することができるようになるために必須の経験であると考えたのである。~略~フロイトは、幼児が成長していくさまざまな段階を、それぞれの時期に中心的な役割を果す身体部分によって名づけている。」まず、そこで登場するのが口唇期です。引用を続けます。「おしゃぶりという習慣は、栄養を摂取するための器官である口と唇を、幼児が性的な快感を享受するために利用していることを示すものであり、この時期を口唇期と呼ぶ。」次に肛門期です。「(排便に対して)子供が母親の期待にこたえ、自分の欲望の充足を諦めるのは、自分の身体で快感をえようとする欲望よりも、他者に愛される自分への欲望が勝るためである。」さらに男根期に続きます。「フロイトはこの時期は、思春期において正常な性器的な体制が確立される上で重要な役割をはたすことを指摘している。幼児期にはさまざまな部位で性的な快感がえられていた。しかし性器的な体制の確立という観点からみると、こうした部位でえられる快感は、それ自体で追求すべきものではなく、ほんらいの性器的な活動のための『前駆快感』にとどめられる必要がある。」その後に展開される性的な成長の中で「性対象倒錯」と名づけている同性愛やフェティシズムやサディズム、マゾヒズムの説明がありました。「幼児の性的な体制」のまとめはこのくらいにしておきます。

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