マグリットの「ゴルコンダ」

「人は常に私の作品に象徴を見ようとします。そんなものはありません。その種の意味はないのです。この絵《ゴルコンダ》を例にとりましょう。群集がいます。それぞれ違った男たちです。しかし、群衆の中の個人については考えないので、男たちは、できるだけ単純な、同じ服装をし、それによって群集を表すのです。しかし、それが一体なんでしょう?どこでも男たちを見かけるということを意味しているのでしょうか?そんなことはありません。おそらく私は、あなたが男たちを見るとは思ってもいないところに、彼らを置きました。だがそれでは、人間は空にもいますよね?空にいる人間。地球は空を動いているし、人間も地球にのって空にいる…。いやいや、違います、人間が地球を支配しているという意味ではありません。それは倫理的な問題であって、私は倫理的な問題に関与しませんし、それに、結局のところ、その事実に確信が持てないのです。タイトルについてはーゴルコンダは魅惑の都市でした。富と豪奢の空想の都、だからタイトルは、なんらかの驚異を意味しています。そして私は、地上では、空を飛ぶことはひとつの驚異だと思います。お望みならば、空を飛ぶのは驚異だから、その絵画に中には喜びがあると言ってもいいのです。また、そこには楽観主義のようなものもあります。しかし、絵画自体には感情はありません。感情があるのは、見る者の方です。その一方、山高帽には何の驚きもありません。とくに独創的でもない被り物です。山高帽をかぶった男は、ただの匿名の、中流階級の男です。私もかぶります。風変わりな人になろうとは思いません。」些か長い引用になりましたが、『ライフ』誌による1966年のマグリットによるインタビュー記事です。シュルレアリスムの巨匠マグリットの制作動機を語ってる興味ある記事ですが、巨匠が人を欺いたように楽しんでいると思えるのは私だけでしょうか。今日まで東京国立新美術館で開催中の刺激的だった「マグリット展」に再度感想を寄せました。

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