現代彫刻か?仏像か?

先日見に行った横浜のそごう美術館で開催中の「円空・木喰展」で注目した作品は、まず円空の円空たる彫刻「護法神」です。円空と言えども初期の頃は、仏像の詳細部分をかなり作り込んでいて、後期に見られる鑿で表情を刻むだけの円空らしさが表れていないように思えます。円空は諸国に多くの仏像を残すことを目的として、木材が仏像に見える限界まで彫り込みを省略していきましたが、それはまさに抽象化への道だったとも考えられます。「護法神」はそんな中で木の根の部分をそのまま使い、枝の突起や空洞を残したオブジェとも仏像とも言えるモノで、現代彫刻を彷彿とさせる驚きの造形ではないかと自分は思いました。次に木喰ですが、寺の境内にあった巨木の穴に彫られた「子安観音菩薩」が画期的な作品だと思いました。立木仏とされていますが、切断したものが今回展示されていました。自然に内包された仏には不思議な生命が宿っているように思えます。木をそのままの状態で提示し、そこに僅かな彫りを加えて祈りの対象とする表現方法は、全国各地の人々に癒しや希望を与えたことでしょう。後世になって現代彫刻的な視点を発見し、現代の人々が新しい価値を見出したのも自然な成り行きかもしれません。当時権力のあった寺院は、有能な仏師に壮大な仏像を依頼し、その完成された美学は仏像そのものだったのに比べて、単純極まりない円空・木喰の作品群は現代に通じる美学を持っていたとも言えるでしょう。

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