「普賢菩薩騎象像」の象徴性

先日見に行った「日本国宝展」に出品されていた名作の数々を取り挙げていくと際限がなくなるので、この「普賢菩薩騎象像」で同展に関する感想は終わりにしたいと思います。「普賢菩薩騎象像」は檜材による寄木造りで作られたもので、象の上に蓮華座を乗せ、その上に菩薩が鎮座する姿に自分は静寂を見て取りました。平安時代に作られた菩薩像なので、定朝様式の穏やかな雰囲気が漂っていました。自分は象の造形に面白みを感じました。動物の象徴性は、現存としての具象性や幻想としての仮象性があっても、その形態解釈に彫刻家の手腕を感じることができ、とりわけ想像で創り上げる寓話的動物に自分は創作意欲を掻き立てられることがあります。「普賢菩薩騎象像」はまさにそんな象徴性をもった木彫ではないかと思います。もちろん「普賢菩薩騎象像」だけではなく、「広目天立像」や「多聞天立像」の下部にある邪鬼にも同じような象徴性を読み取っています。

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