2点の「地獄草紙」

日記として美術館を巡ったことをその日に記録していますが、それぞれの展覧会の詳しい感想は後日改めるようにしています。このところ多くの展覧会を見てきて感想が溜まっています。感想を後日にする意図は、名作の数々を自分なりに解釈して、その代表作を脳裏に刻むために行っているのです。「日本国宝展」は先々週の金曜日の夜に出かけた展覧会です。財善童子立像を一度NOTE(ブログ)にアップしていますが、今回は絵巻を取上げます。会場では地獄で受ける壮絶な苦しみを描いた2点の「地獄草紙」に眼が奪われました。2点はそれぞれ奈良と東京の国立博物館が所蔵しているもので、いずれも亡者や獄卒が動きを伴って描かれる情景に毒々しい色彩、当時は凄まじい迫力を感じたものと思われます。現在は色彩も薄れ、支持体の痛みも激しい箇所が見受けられますが、それでも苦しみ喘ぐ群衆に眼が留まります。自分は動勢のある作品が好きで、様式や形式を重んじる作品よりも面白みを感じます。作者の筆致が活き活きとしていると、内容はともあれ時代の情景をイメージしつつ、心より楽しめるのです。図録によると天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道と並ぶ六道のひとつが地獄道で、六道の中でも最も苦しみの多いところとされており、多くの経典がその凄惨な様相を描いているとあります。壮絶故に印象に残る絵巻で、常軌を逸しているところに魅力があると思いました

関連する投稿

  • 上野の「国宝 鳥獣戯画のすべて」展 緊急事態宣言が東京に出された時は、上野の東京国立博物館で開催中だった「国宝 […]
  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
  • 彫刻家として… 4月になりました。昨日は管理職退職辞令交付式に参加して、私の公務員人生にピリオドを打ちました。今まで職種を隠してきましたが、同じ職種の方々がこのNOTE(ブログ)をご覧になっていることもあり、今にな […]
  • 東京の展覧会を巡った一日 今日は工房での作業は止めて、家内と東京にある美術館に出かけました。コロナ渦の影響で最近ではネットによる予約が一般的になっていて、入館時間も決められています。今日は2つの美術館、3つの展覧会を巡りまし […]

Comments are closed.