屏風と舞台

屏風表現は平面作品を折り曲げ、そこに空間としての距離を作り、単調な画面を立体的に演出するものです。この面白さは折り曲がった平面にあって、鑑賞者は絵画の奥行きを楽しむのです。狭い空間の中で広い遠近を確保するために考えられた素晴らしい表現だと私は思っています。私は屏風をそれぞれ薄箱にして半立体を接合させ、立体とも平面ともつかない表現をしています。屏風なので視点は正面に限定されていて、屏風裏は完全なる裏になっています。そういう意味で言えば平面的視点の作品とも言えます。こうした屏風表現にした半立体作品を今まで3点制作しています。現在4点目の作品を制作中ですが、今回の作品は屏風の前に舞台を設えます。舞台は床を切り取った特殊な空間で、ここに置かれる作品は完全なる立体です。そもそも舞台は演劇や広告のためにあるので、見る方の意識も非日常として捉えます。舞台表現は立体の奥行きを楽しむものです。屏風の平面性と舞台の立体性、その双方をひとつの世界にまとめてみたいというのが現在制作している作品の技巧的意図なのです。

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