「芸術・天才性」に纏わる論考
2014年 1月 14日 火曜日
「意志と表象としての世界」(A・ショーペンハウワー著 西尾幹二訳 中央公論社)第三巻を読み始めると、芸術についての論考が出てきます。「芸術が再現してみせてくれるのは、純粋な観照を通じて把握せられるところの永遠のイデア、世界のいっさいの現象の中の本質的なもの、持続的なものである。芸術がイデアを再現していく場合の素材に応じて、それは造形芸術であったり、詩文芸であったり、音楽であったりするのであろう。が、芸術のただ一つの起源は、イデアの認識である。そして芸術のただ一つの目標は、この認識の伝達ということに他ならない。」さらに続いて天才の天才たる所以が意志を絡めて論考されています。「天才性とは、純粋に直観的に振舞い直観に自己没入する能力のこと、がんらいが意志への奉仕のためにのみ存在する認識に対し、この奉仕をさせないようにする能力のことである。これはすなわち自己の関心、自己の意欲、自己の目的をすっかり無視して、つまり自己の一身をしばしの間まったく放棄し、それによって純粋に認識する主観、明晰な世界の眼となって残る能力のことである。しかもこれは束の間のことであってはいけない。よく練られた技巧で、とらえたものを再現し、『揺らぐ現象の中にただようものを、永続する思想によってしっかり繋ぎとめる』(ゲーテ『ファウスト』より)のに必要なだけ永続的で、またそれだけの思慮を伴っていなくてはならない。」本書を読み始めて、漸くこの芸術に纏わるところになって面白さを感じるようになりました。