「絵の証言」を読み始める

「絵の証言」(佃堅輔著 西田書店)を読み始めました。副題に「ドイツ語圏に生きた芸術家たち」とあって、まさに私が若い頃から注目していた芸術家ばかりが掲載されている書籍です。本書では23名の芸術家を取り上げていますが、その中にはヨーロッパでしか知られていない芸術家も含まれています。頁を捲るとシーレやムンクから始まり、最後はハウズナーまで網羅されています。ルードルフ・ハウズナーは私が30数年前に在籍していたウィーン美術アカデミーの教壇にたっておられました。ハウズナーはウィーン幻想派の旗手で、何人もの日本人が彼の教室で学んでいます。私が知らなかったレヴィン、ラジィヴィル、ネッシュ等はどんな芸術家だったのか興味津々です。こうした芸術家が日本で知られる機会は滅多にないと思っています。とくにドイツ語圏の国々は第二次大戦でナチスドイツの台頭があり、ホロコーストがありました。芸術家の中にはユダヤ系の人も含まれているので、その生涯を賭けた創作活動がいかなるものであったか、また政治に翻弄されて命を落とした人もいたでしょう。現在ではその時代の空気を感覚として読み取ることは出来ませんが、世界情勢が不安定になりつつある現状で、もう一度彼らの芸術的主張を確かめることは有意義であろうと考えます。本書を通勤の友としてじっくり読んでいこうと思います。 

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