週末の読書 「足型の石膏取り」
2013年 10月 13日 日曜日
「コーヒーを飲んだあと、いよいよ石膏の流し込みを始める。中庭は四方を囲まれているわりには、不思議に涼しい風が時おり吹き抜けるが、この夏の異常な暑さで頭がクラクラするほどだった。日陰で石膏を水に溶かし、三回に分けて木箱に流し込む。それから用意した50ペニヒ硬貨を記念に石膏の中で沈める。この硬貨にはオークを植樹する女性の姿が彫られていて、ボイスは今も七千本のオークの植樹の実行中であり、私がこの貨幣を使用する意味を了解したのだろう、ニヤッと笑ってうなずいている。ボイスは私の用意したクリームを足に塗り、『いつでも足を入れるときがきたら言ってくれ』と私に言う。基礎となる石膏層が少し固まったところへ足を入れてもらう。ボイスは細心の注意を払って片足ずつそっと入れる。自分の作品でも作るように、すこぶる慎重な態度である。石膏内に足の位置が決まると、ボイスは完成までの一時間強の間、石膏の柔らかさで、足を宙に浮かせ気味の姿勢を強いられながら一度も足を動かさなかった。ある猛暑の中での忍耐強さには感心させられた。~略~」現在読んでいる「ヨーゼフ・ボイスの足型」(若江漢字 酒井忠康共著 みすず書房)の石膏取りの作業をしている箇所を抜きました。自分も学生時代は人体塑造を保存するため石膏取りをよく行っていました。今でも石膏は好きな素材のひとつです。そんなこともあって、ついこの箇所に注目してしまいました。今日は三連休の中日ですが、職場での仕事を片づけながら本を読んでいます。