軍艦島雑感

軍艦島は極めて刺激的な島でした。1810年頃に石炭が発見されて以来、三菱が本格的な海底炭鉱として操業を開始した端島。人工が増え続け1916年には日本初の鉄筋コンクリートによる高層集合住宅が建設され、その後も住宅は密集し1974年に閉山するまで端島は幾度も埋め立てを行い、独特な景観を作り上げたのでした。端島は外観が軍艦「土佐」に似ていることから軍艦島と呼ばれるようになり、しかも現在はコンクリート廃墟群が並ぶ無人島として存在しています。端島は近代化産業遺産のひとつで、最近になって一部上陸が可能になったようです。島内は野晒しで崩壊が進む中、上陸可能な道が整備され、1時間程度の滞在が出来るようになりました。自分はここでコンクリートの素材感に圧倒されました。また剥落した壁や荒涼とした鉛色の風景に創造的なイメージが掻き立てられました。ロック歌手のミュージックビデオに使われたり、映画撮影に使われたりしたという説明を聞いて、今後もこの景観を利用するメディアが増えるのではないかと思っています。虚無感が美しいと感じる背景に、この島にも悲劇があったものの、原爆ドームのような絶対悪の遺産とは異なるエネルギー資源の変換という社会的状況があることで、まだ美学が入り込む余地があると自分なりに考えました。決して負の遺産ではないところで、そこにアートとしての価値を見いだせるのではないかと思います。

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