週末 BankARTの「山本愛子展」

週末になりました。昨日から取り掛かっているテーブル彫刻制作を継続しています。今日の午前中はテーブル部分の文様の刳り貫き作業を開始しました。昨日描いた下書きをさらに煮詰めて、刳り貫く部分と残す部分を決定しました。今まで制作してきた陶彫とこれから始める木彫の制作方法は、全く逆のスタイルで、彫刻技法で言うところのモデリング(陶彫)とカーヴィング(木彫)になります。使う道具も違えば、身体に対する負担も変わります。木彫には陶彫の乾燥期間のような待ちの時間がありません。いくらでも制作を進めることが出来るのですが、筋肉疲労があって一日中制作していることは不可能です。とりあえず今日は夕方3時までの制作時間にしました。これは陶彫制作と同じ時間帯ですが、身体を慣らすために一日6時間の作業と決めました。工房を出てから、家内を誘って横浜の中心街で開催している個展に行くことにしました。昨日行った山下公園の近くに、BankARTというギャラリースペースがあります。これは横浜市が推進する歴史的建造物、倉庫などを文化芸術に活用しながら、街を再生していく「創造都市構想」のひとつとして設置された施設ですが、そこで私にとってお馴染みの作家である山本愛子さんが個展をやっているのです。山本さんは私の教え子で、大学で染織を学び、中国やインドネシアに出かけて、自分の世界観を培った人です。随分前には工房に出入りしていて、染めのアーティストと当時の私がNOTE(ブログ)に書いていた人です。 今回の個展には自然の染料を用いた大作の数々が展示されていました。多彩で淡い雰囲気に包まれた画面に微妙なグラデーションが施された作品は、優しく語りかけてくるようで、そのささやかな声や音を画面から聴いているような錯覚に陥ります。山本さんの旧作に、一本一本の糸を楽譜に見立てて、音を奏でるように空間演出した作品があります。染めと音響を重ねているところが彼女の個性かもしれません。今回の作品には色彩の移り変わりがあるばかりで、山本さんが以前得意としていた描写がありませんでした。描写には本人の意図が直接表れてしまうので、敢えて描写表現を避けたとも考えられますが、自然の染料を駆使して、どこまで世界を広げられるのか、今後の課題になるでしょう。ともかく前向きな姿勢が現れていた良い展覧会でした。

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