グレコによる「無原罪のお宿り」

先日、東京都美術館で開催中の「エル・グレコ展」を見て、キリスト教の図像学も知らず根拠もないまま、その迸る表現に単純に圧倒されてしまう自分がいました。グレコはギリシャで生まれ、イタリアを遍歴し、スペインに至る道で次第に己の表現を極めていきました。今回来日した作品で最も巨大な作品は「無原罪のお宿り」です。縦3m以上、幅170cm以上の大画面に聖母マリアが曲がりくねって上昇するように描かれていました。複数の人体が縦に長く描かれているのは、天上へ視点を誘う意図であろうと思われます。この絵画は全体を同一視点で眺めるより、視点を変えて描かれた部分を見ていく方が相応しいように思えます。ドラマを紐解くように彫塑的な人体を下から上へと撫でるように見ていくと天上の光に到達するようになっています。人が罪を許されて神に導かれていくように思えてきます。今回の展覧会では最後の部屋に展示されていた「無原罪のお宿り」はグレコの集大成的な絵画であることに間違いはありません。

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