客人をもてなす心

海外に住んでいた頃、日本から友人知人が来ると、観光名所や隠れた名所を案内するのが楽しくて有頂天になっていた時期がありました。おもてなしの心はとても気持ちがいいと感じていましたが、逆の立場でもてなされるのもとても気持ちがいいと気づきました。その頃、社会主義圏だったルーマニアに出かけ、小さな村々を渡り歩いていた時に、農家から招かれて、もてなされた思い出が数々あります。当時のルーマニアは都市よりも農村の方が裕福な印象がありました。彼らは収納庫からありったけの材料を出してきて、料理を振舞ってくれたのでした。物資配給制の時代に信じられない光景を目の当たりにして、おもてなしの心の真髄がわかった気がしました。日本でも客人を招いて料理を振舞うのが自分は大好きですが、今は余裕がなくてそれが出来ません。言い訳かも知れませんが、二束の草鞋生活では時間がなさすぎます。本来の自分なら、こんな器にあんな料理を盛り付けたいとか、料理の組み合わせや演出も考えたいところです。経済的に余裕のなかった若い頃にやっていたことが、今は経済的な余裕があっても出来ないなんてどういうことだろうと思ってしまいます。定年退職したら、客人をもてなす心が再び甦ってくるのでしょうか。日々の決まりきった食事を前にして、そんなことに思いを巡らせました。

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