「石」という素材

オーストリアのウィーンで暮らし始めた頃、生活費を稼ぐため石彫のアルバイトをしていました。ハンス・ムーアという彫刻家がウィーン郊外に工房を持っていて、彼のデッサンをもとに鏨や電動カッターで石を切り出す仕事でした。ハンス・ムーアは室内に置く石の噴水を作っていて、注文がかなりきていたようです。使用する石の産地も様々で、本格的に石をやったことがない自分もそこで賃金を得ながら勉強させていただきました。ハンス・ムーアの彫刻作品はほとんど磨いていましたが、途中の割れた石肌にも自分は魅力を感じていました。割れただけの面と磨いた面。この対比を楽しむ彫刻家もかなりいますが、自分もピカピカに磨くよりは自然のままで残るところがあった方がいいと思います。石は素材の性格上、野外制作に向いています。騒音と埃にまみれた作業です。時間も必要です。重量があるためテコ等で工夫しなければ動かすこともままならない素材です。でも石の肌は大変魅力的で、大きい作品をいつか作ってみたいという願望はあります。

関連する投稿

  • 飯田善国「見えない彫刻」
    最近急逝された現代彫刻家の飯田善国さんが出版したエッセイを、埃をはたいてパラパラ貢をめくって見ています。1977年に購入しているので、手許にあるのは初版です。自分がちょうど大学生の頃で、この本によって現代彫刻のことや海外...
  • ボトルバの教会に行く
    建築からデザイン、そして彫刻へ興味が移っていった自分を振り返ると、彫刻家であり建築も手がけた作家は自分にとって大変魅力的な作家といえます。その逆に彫刻的な建築を作った建築家も魅力的です。スペインのガウデイはその有機的な建...
  • 記憶の底から…
    昨日はエルンスト・バルラッハのことについてブログに書きました。今読んでいる「バルラッハの旅」(上野弘道著)で、自分の記憶の底に眠っていた滞欧生活のことが甦り、ウイーンの美術館にあったバルラッハの「復讐者」という作品が鮮や...
  • ドイツの近代彫刻家
    数年前、東京上野にある東京藝術大学美術館で、ドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラッハの大掛かりな展覧会がありました。春爛漫の季節に美術館を訪れて、バルラッハを堪能したのですが、自分が初めてバルラッハの彫刻と対面したのは、...
  • 芸術家宅を訪ねる随想
    「瀧口修造全集1」に収められている「ヨーロッパ紀行」の中に、ダリを訪ねた時の随想が載っています。アトリエの中の描写やダリの人柄に、ほんの少しばかり親近感が持てるような気になります。スペインの海辺のアトリエは理想的な環境だ...

Comments are closed.