「神と人を求めた芸術家」

表題はドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラハのことを取り上げた「バルラハ~神と人を求めた芸術家~」(小塩節著 日本キリスト教団出版局)の副題になったコトバです。バルラハは最近日本でも徐々に知られてきた彫刻家であり劇作家ですが、やはりまだ知名度が高いとは言えません。本国ドイツでも埋もれていた芸術家で、再評価する動きが高まるにつれ、欧州各地の有力美術館に作品が所蔵されることになったのです。ナチスの弾圧を受け、「頽廃芸術」とされ、多くの作品が放棄される憂き目にあったバルラハは、本書では宗教的な視点から、その生涯が論じられていて、神を求めつつ人の中にある真実を目に見えるカタチで、一貫して表現した苦業の日々が綴られています。著者小塩節と聞いて、自分には滞欧前に日本で勉強したドイツ語のことが思い出されてきます。確かNHKドイツ語講座の講師ではなかったかと思いますが、その親近感のある人の著書ということだけで本書を手に取ってしまいました。バルラハも自分が初めてウィーンで見た作品が忘れられない彫刻家で、ずっと脳裏に焼きついていた人だったのです。ブログにも何度か取り上げましたが、自分の中にバルラハ熱が再燃するのを覚えます。

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