新作屏風「発掘~混在~」について
2012年 1月 6日 金曜日
私のデビュー作は、陶彫レリーフによる三双屏風「発掘~鳥瞰~」です。陶土を混ぜ合わせて焼き締めた陶彫を、6点の画面に配置しました。また、砂によるマチエールを作って陶彫の部品との融合を図りました。上空から大地を見下ろした心象風景を作りたいと常々考えていたことが、ようやくこの時にカタチになったのでした。あれから10年が経ち、今一度三双屏風に挑戦しようと考えました。新作屏風「発掘~混在~」は画面を厚くして陶彫部品を大地に埋め込んだ状況をイメージしています。20代の頃、5年間滞在したヨーロッパの生活にピリオドを打ち、帰国前に数ヶ月かけてエーゲ海沿岸の古代遺跡を訪ねて歩きました。あの時、大地に刻まれた悠久たる遺跡に、もはや人の痕跡はなく、風雨に晒された都市の何たるかを考えさせられたのでした。その印象が帰国後に時間をかけて醸成されるようにイメージの取捨選択がされて、また具象的な要素が削げ落ちていきました。そこから発想した「発掘~鳥瞰~」は、欠落した都市構造であり、また幾星霜に渡って人々が禍根を残し、さらに忘れ去られていった都市の存在そのものをテーマにしたのです。新作「発掘~混在~」も同じ発想に立ち返って作ることにしました。屏風という展示方法をとるのは鑑賞者の視点を考慮し、屏風の折れ具合で風景にやや角度がつき、平坦ではない空間を演出したい意図があります。
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