嵐のクレタ島

1985年に旅したトルコ・ギリシャ。4月の個展が近づくにつれ、展示する作品の多くがこの旅でイメージを培われたことを思うと感慨一入です。2ヶ月以上に及んで滞在したトルコを後にして、ギリシャのクレタ島に向かったのは10月に差し掛かっていました。エーゲ海というのはいつも青い空と青い海が広がっているところというイメージをもっていましたが、さにあらず。この日は荒天で、まるで北斎の浮世絵のような荒れ狂う波に、笹舟の如く頼りない舟は自然の成り行きまかせになり、さんざんいたぶられた挙句に、やっとクレタ島に漂着したのでした。もちろんクレタ島も嵐吹くフォービズム絵画のような風景が目前に広がり、観光ポスターとは正反対の印象をもってしまいました。ただ、ギリシャに渡った瞬間に、芳しい豚肉や鶏肉の焼いた匂いがして、トルコの羊肉に辟易していた胃腸にはたまらない魅力でした。

関連する投稿

  • 大内宿に纏わること 福島県南会津郡下郷町にある大内宿は数回訪れています。最初はずい分前になりますが、豪雪の積もる大内宿に車のタイヤを滑らせながら入りました。奥深い里という印象でした。自分の出身校には民俗学研究室があって […]
  • 新作屏風「発掘~混在~」について 私のデビュー作は、陶彫レリーフによる三双屏風「発掘~鳥瞰~」です。陶土を混ぜ合わせて焼き締めた陶彫を、6点の画面に配置しました。また、砂によるマチエールを作って陶彫の部品との融合を図りました。上空か […]
  • 遺跡めぐり行脚 1985年晩夏、5年間住んだウィーンの住宅を引き払って、ヘレニズム時代の都市遺跡を見にトルコやギリシャに数ヶ月の旅に出ました。交通手段はもっぱらバスと徒歩でした。ヒッチハイクもしました。何といっても […]
  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 週末 BankARTの「山本愛子展」 週末になりました。昨日から取り掛かっているテーブル彫刻制作を継続しています。今日の午前中はテーブル部分の文様の刳り貫き作業を開始しました。昨日描いた下書きをさらに煮詰めて、刳り貫く部分と残す部分を決 […]

Comments are closed.