詩的言語による作品分析
2011年 4月 6日 水曜日
通勤電車の中で読んでいるA・ブルトン著「シュルレアリスムと絵画」(人文書院)に収められているマルセル・デュシャンの作り出したガラス絵「花嫁は彼女の独身者たちによって裸にされて、さえも」に関する分析は、造形美術に対する価値観が大きく変わったことを示唆していて興味を持ちます。瀧口修造全集(みすず書房)にもデュシャンの同作品が取り上げられていたので概略は知っていましたが、これほど綿密で詩に富んだ評論は、じっくり噛み砕いて読むのに相応しいと思いました。美術評論の中で造形作品に相応する詩的言語が用いられ、作品から発せられるイメージを源泉にした詩的世界に思いを寄せるのは、作品の分析と解釈が一筋縄ではいかないことを意味しているように思えます。事実、この作品を図版で見た時に、何か言いようのない世界観があって、この洞察には鑑賞する側に通念をひっくり返していくだけの覚悟が必要だと感じました。A・ブルトンや瀧口修造が試みた詩的言語による分析は、単なる評論を超えて、創造的な世界を構築しているように思えます。
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