箱宇宙に捧げられたコトバ

アメリカ人アーティストのジョセフ・コーネルと詩人の高橋睦郎によるコラボレーションによる展覧会は、さまざまな角度から自分を刺激してくれました。そのひとつに造形作品に捧げられた詩人のコトバがあります。捧げられたというのは誤解を招くかもしれませんので、造形作品から発想を得て新たに創作された詩とでも言った方が相応しいと考えます。実はこの関わりが知りたくて、先日自分は千葉県佐倉市の「川村記念美術館」まで出かけていったようなものなのです。詩人高橋睦郎は以前も現代美術家とのコラボレーションをしていた記憶があります。コトバのひとつひとつを辿ると、詩人はコーネルの箱宇宙から与えられたイメージを基にコトバを紡ぎ出し、決してコーネルの作品に寄りかかることはなく、詩的世界を独自に創っているように思えました。さらに詩の内容もさることながら、詩が印字された紙が何とも気持ちがよくて、そのざらついた素材感は、コーネルの作品に相まって、素朴な風合いを生かしながら訥々と心に染み込んでくる感覚を持ちました。展示方法にも工夫が凝らされていて、これはまた機会を改めて述べていきたいと思います。

関連する投稿

  • 詩的言語による作品分析 通勤電車の中で読んでいるA・ブルトン著「シュルレアリスムと絵画」(人文書院)に収められているマルセル・デュシャンの作り出したガラス絵「花嫁は彼女の独身者たちによって裸にされて、さえも」に関する分析は […]
  • 作品展示の演出 彫刻を学んでいた学生時代には、作品のクオリティを高めることに精を出していて、作品がどこに展示されるかは念頭にありませんでした。作品を人に見せることを考えていなかった時代です。これはこれでよかったと今 […]
  • 若林奮「Dog Field」展 多摩美術大学美術館で開催されている故若林奮先生の「Dog […]
  • 詩人の死生観について 「ぼくは死は生と地続きだ思っているんです。肉体は服を脱ぐように脱げるもので魂は生き続ける。だから、妻や友人たちを思い出すということは、彼らが、俗世間で生きているぼくたちとは違う形で生きているんだと思 […]
  • 「瀧口修造の詩的実験1927~1937」 現在、通勤時間帯ではドイツ表現主義の画家アウグスト・マッケに関する書物を読んでいます。自宅の食卓には「瀧口修造の詩的実験1927~1937」(思潮社)がいつも置いてあって、毎晩適当な頁をめくっては何 […]

Comments are closed.