8月RECOERDは「苔」

今年のRECORDの年間テーマは色彩です。西洋の色相環に代表される基本的な12色の他に、日本には和色大辞典があって情緒のある色彩名が並んでいます。アクリルガッシュにはそうした日本の色彩名がついた絵の具のシリーズがあって、画材店に行くと目移りがします。アクリルガッシュを入れた私の収集箱には、徐々に日本の色彩が増えてきて、それを眺めているだけでも幸せを感じます。8月のRECRDのテーマを「苔色」にしました。苔は京都の寺院の庭園で大切扱われているコケ類(コケるい)や蘚苔類(せんたいるい)、蘚苔植物(せんたいしょくぶつ)の総称を言うようです。湿気の多いところを岩石面を覆うように苔は生え、寺院の庭園一面に広がる苔は美しい景観を齎せてくれます。「苔むす」という言葉は悠久の時間を示すもので、国歌「君が代」の歌詞にも登場しています。そんな微妙な色彩を扱うには、周囲の状況も描かねばならないと思っています。実際の苔を見ると同時に、日本画に表現された古木や岩に存在を示す苔にも注目していきたいと思っています。苔を描くことで風景が幾星霜にもわたって続いてきた自然のありさまを表現しているのでしょうか。日本には潤いのある自然があり、苔むした石に私たちは情緒を感じてきました。苔の暗く翳った色彩は、まさに日本の色彩と言えます。

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