関西出張③ 松尾大社「曲水の庭」
2018年 5月 31日 木曜日
作庭家重森三玲は幾たびかNOTE(ブログ)に登場していて、私が関心を寄せる作家の一人です。亡父が造園業をやっていて、そこで育った自分の生育歴と重森三玲の仕事が重なっているのかもしれません。私は自然石の組み方を亡父に教わったことがあり、小さな個人庭園の飛び石を職人さんたちと協力して施工したこともありました。学生時代に自分がバイトでやっていた中途半端な職人紛いの仕事とは違い、重森三玲の庭園はスケールと空間の解釈に圧倒的な迫力があって、古来から伝わる庭園の知識の上に成り立つ現代の庭園のあり方を示しているのではないかと考えています。以前東福寺を訪れた時、あまりにも現代的な石庭が眼前に広がっていて驚いた記憶が今も甦ります。今日は初めて嵐山の松尾大社に行き、重森三玲が作った幾つかの庭園を見る機会を得ました。「上古の庭」「曲水の庭」「蓬莱の庭」そこに即興的に作られた庭を加えると4つの庭園が松尾大社にありました。「蓬莱の庭」は三玲の遺作となり、長男が三玲の遺志を継いで完成させたようです。私が心から楽しんだのは「曲水の庭」でした。奈良時代にあった曲水式庭園を範として作られたようで、うねるような水の流れ、サツキの大きな刈り込みが緑泥方岩と相俟って、人工的な美しさを感じました。高い木々が一切ないことも上部に開放感があって、私の視点に叶っていました。それは場を演出する彫刻群を見ているようで、イサムノグチのストーンサークルに通じる造形感覚を、そこに見取りました。自然石と自然石との間に、見えない糸が張り巡らされていると想像すると、全体の構成が緩急を極めていて、空間美の説得力があると思いました。また来る機会があるでしょうか。庭園内をウロウロ歩きながら、再訪を誓いました。
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