関西出張② 「エリオット・アーウィット展」

京都にある何必館・京都現代美術館で開催していた 「エリオット・アーウィット展」を見てきました。エリオット・アーウィットは1928年パリで生まれた写真家で、戦禍を逃れてアメリカに渡り、フォトジャーナリストとして有名になりました。25歳の若さで写真家集団マグナムの一員となり、高い評価を得たようです。J・F・ケネディ大統領や、キューバの革命家チェ・ゲバラ、女優マリリン・モンローなど、20世紀を代表する著名人を多く撮影していました。でも私が関心を持ったのは、何気ない日常の瞬間です。子供たちや散歩する犬に向けられたカメラにドキッとするような場面がありました。銃弾が当たった車のガラス窓の向こうに少年の顔があり、蜘蛛の巣状に罅割れたガラス越しに少年の右目が隠れていたり、荷台にバゲットを2本積んだ自転車に乗った父と子が同じベレー帽を被っていたり、社会的な揶揄とユーモアに溢れたエリオット・アーウィットの世界観は、祇園界隈の雑踏を暫し忘れさせてくれました。写真は時にモノクロの方が主張がはっきりと感じられるのではないかと思うことがあります。モノクロでも充分色彩を感じさせるものが写真にはあります。寧ろ余計な説明がない分、力強く訴えてくるのです。写真は一瞬を捉えていく技巧で、刹那な時間を永遠に閉じ込めてしまう表現です。誰にも出来るようでいて、誰にも出来ない表現でもあります。美しさを追求したものもあれば、社会的告発を主題にしたものまで多様です。エリオット・アーウィットの世界観は単なる記録とは違い、人間や動物が一瞬見せる表情を捉えて逃がしません。そこに面白さを感じるのが写真展の醍醐味です。

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