「夜と霧」読後感
2014年 4月 24日 木曜日
「夜と霧」(ヴィクトール・E・フランクル著 池田香代子訳 みすず書房)を読み終えました。読み終えた時には心が震撼して何とも言えない感慨に包まれました。本書は万にひとつの奇跡で生き残ったユダヤ人精神医学者が、強制収容所の中での壮絶極まる体験を通して、その精神的内面の分析を含めて語ったノンフィクションです。そこには生命の極限状態とともに崇高な思念が描かれており、当時の被収容者の心理が、たとえば現在起こりうる震災で、仮に自分が全てを失い、閉塞感に陥るであろう心理と重なるような読み取り方をしてしまうと、何ともやりきれない思いが伝わるのです。2人の翻訳者のあとがきから引用します。まず、霜山徳爾氏の一文です。「彼の一家は他のユダヤ人と共に逮捕され、あの恐るべき集団殺人の組織と機構を持つアウシュヴィッツ等に送られた。そしてここで彼の両親と妻は、或いはガスで殺され、或いは餓死した。彼だけが、この記録の示すような凄惨な生活を経て、高齢まで生きのびることができたのである。」次に池田香代子氏のあとがきを紹介して本書のまとめにしたいと思います。「ある全国紙が2000年の年末におこなった『読者の選ぶ21世紀に伝えるあの1冊』という大がかりなアンケートで、翻訳ドキュメント部門の第三位に挙げられたと記憶するが、それも、この本がこのくにの戦後の精神風土に与えた影響の大きさを物語っている。~略~受難の民は度を越して攻撃的になることがあるという。それを地でいくのが、21世紀初頭のイスラエルであるような気がしてならない。フランクルの世代が断ち切ろうとして果たせなかった悪の連鎖に終わりをもたらす叡智が、今、私たちに求められている。そこに、この地球の生命の存続は懸かっている。」