新作の陶彫部品第1号

このところ現行作品の梱包を続けていますが、この単純作業だけでは飽きるので、来年に向けて新しい作品も同時に作り始めています。来年の作品も陶彫部品を組み合わせて集合彫刻として見せるもので、木材とのコラボレーションも考えています。全体のイメージはまだ明確ではありませんが、こんなことを試してみようと思っていることがあって、まず最初の陶彫部品を作ってみることにしました。現行の「発掘~盤景~」は直方体を基本にした陶彫部品を数多く作りました。モノによっては2段重ねや3段重ねがあり、重層化された空間を作っています。来年の新作も同じ方法を取りますが、形態は不定形で有機的なモノです。ただし、来年の作品の見せ場は崩壊にあります。どこまで作り上げたモノを崩していくのか、マッス(量)を部分的に取り除くことで、さらに大きな空間が獲得できないものか、今月に入って頭の中で思索を続けています。ただし、今日作り上げた陶彫成形はかなり大きなもので、窯の容量いっぱいに設定しました。成形されたモノには穴を空けていきます。この穴に意味を持たせようとしています。彫り込み加飾はこれからですが、この陶彫部品第1号には全体の方向性を決めていく重要な役割があるのです。全体の中のたかが1点、されど1点が良し悪しを決定すると言っても過言ではありません。欠落した部分があるからこそ美しい、それは意図したものでなくて偶然に美がそこに留まった状況なのかもしれません。全部を作ってしまうと退屈してしまう、そんな歴史上の美術作品を私は多く見てきました。途中で止めてしまった作品、壊れかけた作品に不思議な面白味を感じ、これは意図して作れるものではないなぁと思いを巡らせながら、自分の考えをまとめようとしています。師匠の池田宗弘先生の真鍮直付けの作品にも完璧ではない形態があり、そこに美が宿っています。それに対し池田先生の説明はありません。作り込むところと放っておくところを考えながら、斬新な空間の追求をしているのかなぁと自己解釈をしていますが、果たしてどうでしょうか。細工をするべきか、そこまで作らない状態で放置すべきか、その場の判断でやっていくしかないと思っています。ともかく今日は新作の陶彫部品第1号を試みました。

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