「発掘~聚景~」のイメージ

厚板6枚で屏風を構成し、その屏風と床を使って陶彫部品を組み合わせた作品を「発掘~聚景~」と名づけることにしました。聚景は造語で「しゅうけい」と読みます。屏風には格子模様の穴を刳り貫き、その穴を避けるようにして陶彫による物体が屏風の壁を這っている状況を作りました。その陶彫の物体は壁から床に伸びていき、床には陶彫による集合体があって、そこに収斂していきます。屏風になる壁は廃墟のような荒涼とした風景にしたいと考えてザラついた砂で固めました。そんなイメージの源泉はどこにあったのか、そもそも陶彫による集合彫刻を思いついたのは、20代の頃に旅した地中海沿岸のギリシャ・ローマの遺跡の印象に起因しています。その後、アジア各地にある古代遺跡の数々を見て回り、そこに在りし日の栄華を極めた都市に思いを巡らすこともありました。「発掘~聚景~」の制作途中で母が他界し、自らの死生観を培ったことも作品に少なからず反映しているように思います。数日前のNOTE(ブログ)に書いた文章を引用します。「人間は生物的な死とは別の、たとえば魂の在り処がどこにあるのか、それが失われるとその人は外見だけを留めた存在になるのではないかと思います。死を哲学できるのは高度な知性を有する人間に限られていて、そのために他界への準備を行い、後に残された人々が死者が歩んでいくであろう死後の世界をイメージできるようになるのだと私は考えます。」こんな思いが制作中に頭を過りました。作品は魂の産物だと私は考えていて、2011年に制作した「発掘~混在~」では制作中に東日本大震災があり、作品に籠める思いが変わりました。今年の「発掘~聚景~」でも個人的には母の死や、世界的な規模になった新型コロナウイルス感染が多少なりとも影響を及ぼしています。イメージの起因はあっても1年間かけて制作しているうちにさまざまなことに遭遇し、自分の中でイメージを統括していくものだろうと思います。

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