「モディリアーニ」第4章のまとめ

「モディリアーニ 夢を守りつづけたボヘミアン」(ジューン・ローズ著 宮下規久朗・橋本啓子訳 西村書店)の第4章「モンマルトルからモンパルナスへ」のまとめを行います。副題として「彼は恐るべき衝動に駆られて彫刻を作っていた」とあり、25歳になったモディリアーニは、一旦故郷に帰りますが、だんだん家族のモラルが息苦しくなり、再びパリに戻ってきます。モンパルナスに移ってもモディリアーニの関心は彫刻にあったようです。「彼は恐るべき衝動に駆られて彫刻を作っていた。砂岩の大きな塊をアトリエに持ってこさせ、石にじかに彫りこんでいた。彼はときに怠惰を愛し、高度に洗練された態度で怠惰に身をまかすことがあるように、仕事に深く没入することもあるのだ。彼のすべての彫刻は石をじかに彫ったものであり、粘土や石膏は決して使わなかった…この(彫刻への)衝動に襲われると、彼は画材をすべて脇に押しやり、ハンマーを握るのだ」これはドイツの批評家がモディリアーニの制作の現場を見て感想を述べたものです。「モディリアーニがブランクーシと同じく、現代の彫刻は堕落しており、ロダンの影響でだめになっていると思いこんでいた。彫刻家はあまりにも粘土によって塑形しすぎており、彼のことばによれば『泥まみれになっている』というのであった。この芸術を再生させるためには、大理石をじかに彫る以外に道はないという。」モディリアーニがアフリカの原始的な黒人彫刻に傾倒していた様子も伺えました。また、こんな一文もありました。「彫刻を続けるために、朝デッサンを描き、夜それをカフェで売るという生活をしていた。この作業は彼の心身をすり減らし、彼は不安と人生の孤独で消耗してしまった。しかし、石に自らの意思を刻むという肉体的な努力は、何事にもかえがたいある種の満足と例外的な平安を彼にもたらせた。若い頃イタリアの偉大な美術都市を訪れて以来、モディリアーニは環境を浄化するような建築的な等身大の彫刻を創りたがっていた。」モディリアーニは絵に関しては気難しい面もあり、偏屈な性格が垣間見えるところもあったようです。「彼は絵を売るときもいつも傲慢であり、見込みのある客にもへつらったり持ち上げたりすることはできなかった。あるとき、モディリアーニのデッサンをまとめてほしがった画商が、彼が希望した控えめな価格よりもさらに安く値切ろうとした。~略~モディは押し問答するのをやめた。彼はカウンターにあったナイフをつかむと、紙の束を突き破って穴を空け、それらを紐でくくると、おもむろに店の裏手の手洗所に行き、トイレの中の留め金にその繊細なデッサンを引っ掛けてしまった。」やれやれ、食うや食わずになってもプライドの高い芸術家であったモディリアーニ。早くも人生の佳境を迎えようとしていました。

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