「ヨーロッパの形」を読み始める

先日まで読んでいた「日本流」(松岡正剛著 筑摩書房)の後は、真逆に位置する西欧の文化史に触れたくなって、「ヨーロッパの形 螺旋の文化史」(篠田知和基著 八坂書房)を読み始めました。私は1980年から5年間ヨーロッパに住んでいました。彼の地の美術アカデミーに通っていましたが、旧市街を彷徨い歩くことが好きで、学校よりも散策によってヨーロッパを体感することが、今も印象強く心に残っています。ヨーロッパの旧市街は階段が多いなぁと当時感じていて、年老いた人が杖を支えに階段を登っていく姿をよく見かけました。街の景観としては、平面的に広がる日本の農村風景より、石材で構築されたヨーロッパの立体的な風景の方に私は惹かれていて、これはないものねだりの異文化憧憬なのだろうと思っています。本書のはじめの言葉を引用いたします。「なぜ螺旋階段なのかといえば、まっすぐな梯子ではどこかに支えがなければ立たないが、螺旋階段で、それも螺旋の半径がおおきいものであれば支えがなくともそれだけで立つのである。先のほうは雲間に消えているが、ぐるぐる回っていればそのうち天につく。ネジの原理である。日本に種子島銃が渡来したとき、さっそくそれを分解して模倣しようとして、一番苦労したのがはじめて見るネジというものだったという話は有名だし、咸臨丸のころでさえ、アメリカに渡った使節たちが荒物屋でネジを買ってきたという話もある。」成程、西欧の文化史は螺旋から始まると言ってもいいかもしれません。螺旋文様は私が大好きな形のひとつです。植物の生長に限らず、人間の筋肉のつき方も螺旋になっていると、彫刻を学び始めた頃に学校で教わりました。立体は直に立っているより捻ることで構造は強くなる、そんな立体感覚を持ったのもその頃でした。今回はそんな自分の興味関心を受け止めてくれそうな書籍に出会うことが出来ました。通勤の友として楽しんで読んでいきたいと思います。

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