新作印のデザインと彫り

陶彫部品を組み合わせる集合彫刻には、私は新作ごとに新しい印を貼り付けています。これは多くの部品から成り立つ故の工夫ですが、陶彫部品ひとつひとつの隠れた場所に印を貼り、番号をつけておきます。その番号に従って順序良く組み立てると、集合彫刻が出来上がるというわけです。私の作品は私一人では組み立てられない代物であり、多くの協力者が必要です。スタッフがいないと何も出来ないというのは、助っ人からすれば迷惑な話ですが、大きな彫刻にはそうしたことが多々あります。彫刻家は孤高などと言っていられない事情があって、普段から同僚や後輩や教え子を大切にしていないと協力は得られないのです。陶彫部品に貼り付ける印は、毎年新しくデザインして彫っていきます。作品は分解して保存しておくので、新作の印は部品同士が混ざらないための工夫です。印は柔らかい高麗石に彫りますが、書道家ではないので、篆刻に拘ることはなく自由気儘にデザインをしています。まるで文字を変形させた抽象絵画のような塩梅です。「発掘~双景~」の印は氏名を直線的に構成し直し、ほとんど文字が読めないところまで抽象化してしまいました。「発掘~曲景~」は苗字のみアルファベットで構成したデザインにしました。和紙を小さく切って印を押し、番号を付けて貼るのを、さて、いつにしようか考えています。少なくとも図録撮影日に組み立てるので、そこまでには印を貼っておかなければなりません。今晩の工房は焼成があって使えないため、自宅で印を彫ることに精を出していました。明日は工房が使えるので、陶彫部品の修整を加えながら印貼りをしていこうかと思っています。

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