2月RECORDは「梱包の風景」

今年のRECORDは「風景シリーズ」を始めています。今までのRECORDにも風景が再三登場してきましたが、改めて風景を取り上げることで、新しい可能性に挑みたいと思っているのです。今月は「梱包の風景」にしましたが、ブルガリア生まれでアメリカで活躍する芸術家クリストの作品を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。クリストの作品は言うなれば「風景の梱包」です。歴史的建造物や海に点在する島などを巨大シートで覆い隠すプロジェクトは、度肝を抜く迫力で風景の非日常化を図ったものでした。シートで覆い隠すことで今まで見慣れたものが、日常を離れ、巨大なオブジェになる瞬間に、私たちは用途を暫し忘れて、驚きを隠せなくなってしまうのです。クリストはドローイングや版画でそのアイディアを表現しています。私もそれに近いことをRECORDでやろうとしています。もちろんクリストのように実際に作ることは不可能ですが、梱包に対する不可思議な魅力に贖えない自分がいます。彫刻家若林奮も自らの造形を鉄や鉛で覆い隠すことをやっていました。梱包された内部に何が潜んでいるのか、見えない作品を詮索する面白さ、梱包された外皮に対する印象や美的価値転換など、梱包そのものを芸術として思索するとさまざまな考えが出てきます。今月は「梱包の風景」をテーマに1ヵ月間頑張ってみたいと思います。

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