映画「懺悔」雑感

ジョージア(グルジア)映画「祈り 三部作」のうち「懺悔」について詳しい感想を述べてみたいと思います。「懺悔」は1984年にテンギズ・アブラゼ監督によって制作された政治色の強い映画で、当時は「反ソビエト」という烙印を押され、監督だけでなく家族さえ重罰になりうる危険もありました。理由としては全体主義における粛清、つまり独裁者と虐げられる市民の日常を象徴的に描いているからです。ソ連崩壊後に国際的な映画祭で賞に輝き、反体制的な主題は大きな反響を呼ぶことになりました。物語の初めは架空の街を舞台に、多くの罪のない人たちを粛清していた市長が亡くなり、盛大な葬式が挙行されましたが、その遺骸が何度も掘り起こされるという奇妙な事件に端を発しました。犯人は市長によって両親を殺された女性でしたが、裁判で市長の犯した罪が被告によって露わになり、それを傍聴していた市長の孫が、祖父の罪から良心の呵責に苛まれ、やがて自殺に追い込まれてしまうのでした。市長の芝居がかった言動やその息子夫妻を滑稽に描いたりして、映画の主張する真面目な体制批判を下敷きに、極端な寓話表現として処理することで、映画としての面白さも加味されていました。「私たちは血なまぐさい方法で、長い間、善良さを根絶やしにしてきたことの報いを受けています。自分の過去を葬った者は、現実に近づくことも、未来を見ることもできないのです。最大の罪は恐怖なのです。」とアブラゼ監督が語っている通り、この映画の持つ社会性は私たち市民生活そのものに対する問いかけでもあると思っています。現在の国際社会でも全体主義を標榜する国があります。そこでの市民生活がいかばかりか想像に耐えませんが、平和を謳歌している日本でさえ、国威掲揚的な思想が入り込むと、この先どうなるのか分からず、一抹の不安を覚えるのは私だけではないと思っています。

関連する投稿

  • 閉庁日(休庁期間)の始まり 今日から職場は閉庁日(休庁期間)に入ります。私の職場は1月5日まで閉庁するので、休庁期間は合計9日間になり、例年この時期、私は来年夏に発表する陶彫による集合彫刻の制作に没頭しています。これがなければ […]
  • 三連休 職員の結婚式に参列して… 朝になると大型台風が過ぎ去って、見事な青空になっていました。今日は前の職場で一緒に仕事をしていた若手職員の結婚式がありました。新郎は専門職の初任として4年間その職場に勤めていました。私は管理職として […]
  • 「即位礼正殿の儀」で創作活動の機会を得る 今日は「即位礼正殿の儀」で、官公庁は休日になりました。「即位礼正殿の儀」とは、天皇陛下の御即位を内外に広く披露するための儀式です。言わば外国で称される「戴冠式」のようなものだろうと思います。天皇制が […]
  • 映画「万引き家族」雑感 昨晩、常連にしている横浜のミニシアターに映画「万引き家族」を観に行ってきました。映画の帰りは家内と映画の話題が尽きず、この映画がそれだけ面白かった証なのだと思いました。足の踏み場もない雑多な家具什器 […]
  • 残務整理の日々 昨年の3月27日は職場を休んで、家内と埼玉県川越に行って花見を楽しんでいました。ついこの間のような気がしていますが、あれからもう1年過ぎたのかと改めて月日の経つ早さを実感しています。今年度はこの時期 […]

Comments are closed.