映画「ローマ法王になる日まで」雑感

私が常連になっている橫浜のミニシアターには夜の時間帯に上映するレイトショーがあって、仕事から帰ってから映画を楽しむことが出来るのです。今回観た映画は「ローマ法王になる日まで」という実在の人物を扱った映画でした。これは単なる立身出世のドキュメンタリーではなく、制作スタッフが法王の若かりし頃の行動を現地で丹念に調べ上げた探求の成果であろうと思いました。監督のインタビューに「多くの素材をもとにした解釈」「現実と架空のあり得る要素のミックス」という言葉があります。また人々の中には法王を「仮面を被った保守主義者」や「見た目ほど革新的な人物ではない」という評もあって、法王の人物像に迫るのに大変な苦労を伴ったことが垣間見れます。第266代ローマ法王フランシスコは、アルゼンチン出身の異色の人で、彼ベルゴリオが軍事政権の中で司祭として不当な仕打ちを受けたり、貧困と寄り添う状況が、映画では危機感をもって迫ってきます。時に政府に苦言を呈し、立ち退き住民と市との交渉役をしたり、現実と架空が入り交じる映画ではあるけれども、ベルゴリオの憤りはリアルに伝わってきました。映画のパンフレットから言葉を引用いたします。「本作は、いかにも英雄として彼を描き出すことはしない。自分の無力さに打ちのめされ、時に信条に反して仲間を説得し、怒りに震えて嗚咽を漏らすベルゴリオの姿や息遣いを、等身大の人間としてリアルに映し出す。それによって我々は、遠い国の過去の出来事としてではなく、非常にエモーショナルに彼が生きた時代を追体験させられることになる。」

関連する投稿

  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 映画「JUNK HEAD」雑感 昨晩、久しぶりに横浜の中心街にあるミニシアターに家内と行きました。レイトショーであるにも関わらず、上演された映画の客の入りは上々だったのではないかと思いました。映画「JUNK […]
  • 創作一本になった4月を振り返る 今日は4月の最終日なので、今月の制作を振り返ってみたいと思います。今月の大きな出来事は、長年続いた教職公務員との二足の草鞋生活にピリオドを打って、創作活動一本になったことです。これは自分の生涯の転機 […]
  • 映画「異端の鳥」雑感 先日、川崎駅前にある映画館TOHOシネマズへ「異端の鳥」を観に行ってきました。本作を私は新聞で知りましたが、上映館が少ないため自宅近くの映画館を探して、しかも深夜の時間帯に行ってきたのでした。家内が […]
  • 映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」雑感 昨晩、家内と横浜市都筑区鴨居にある映画館に、今話題となっているアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観てきました。「新世紀エヴァンゲリオン」は20数年前に社会現象となり、私もそのアニメーション […]

Comments are closed.