「中島修論」① 超多面体彫刻について

通勤の時に「芸術の摂理」(柴辻政彦・米澤有恒著 淡交社)を読んでいます。本書は2013年4月に76歳で亡くなった石彫家中島修さんの評論が収められているので購入したのです。中島さんはオーストリア国籍をもつ日本人彫刻家だったため、日本で作品を論じられることが少なく、作品をよく知る自分は、その凄さに圧倒されていて、もっと日本で評価されてもいいと思っています。本書の頁を初めから括ることはせず、まず中島さんの評論(柴辻政彦著)から読み始めました。著者の取材によって自分が知らなかった中島さんの経歴や生活事情もわかって、実はそれが自分の創作活動の励みになっています。まず、今回は中島さんの彫刻について本書から引用したいと思います。「位相幾何学の変換公理を見つけたかのごとき不思議な超多面体の、鉱物結晶のような作品を、次から次へ彫り出している。一般的にいう情緒性というものがほとんどないのである。~略~たったひとりでコツコツ探索した独自の造形思索、彫刻観、技法が秘められている。~略~現代彫刻家のイサム・ノグチや、流政之の作品でも、石の彫刻というものは、おおかた、何億年も地中で泥を被ったままの原石のもつ歴世の威厳に敬意をはらい、永遠との共鳴を表現するのが特徴的だと教わってきたが、この点で、中島修は違っている。」この引用文で中島ワールドを全て語り切れている訳ではありませんが、中島さんは超絶技巧によって超多面体作りを行っていたとしか言いようがありません。おまけに中島さんの石の超多面体が数多く置かれている工房に、自分の記憶では雛型はありませんでした。普通なら紙で面の角度などを割り出す数学的な作業があっていいはずなのに、それが見当たらないのです。いきなり原石に電動カッターを当てていったというのが中島流なのでしょうか。次の機会に中島さんの仕事に対する諸々なことを書いてみたいと思っています。

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